東京ガスは11月16日、群馬地区と群馬南地区のガス料金を値上げすると発表しました。家庭用は、2023年5月検針分から、事業用は2024年5月検針分から適用となります。
原料費調整制度の適用比率の拡大が主な要因です。直近の平均原料価格を適用した場合、標準家庭(月36立方メートル使用)における実質的な値上げ率は3割に上ります。
家庭用については、急激な負担増を緩和するための移行措置を2023年9月検針分まで講じるとしています。5月から9月にかけて段階的に値上げが適用されることになります。
現在、東京ガスの供給エリアは、
- 東京地区等
- 群馬地区
- 群馬南地区
- 四街道12A地区
の4つに分類されていて、それぞれ異なる料金体系が適用されています。
群馬県内において東京ガスの都市ガスは、特殊な状況です。
例えば東京都や埼玉県、神奈川県などの東京ガス供給区域に関しては、すべて「東京地区等」でまとめられています。
一方で群馬県内においては、現時点で3つに分類されています。
群馬県の都市ガス区分
【東京地区等】
- 明和町
- 千代田町
- 邑楽町
【群馬地区】
- 高崎市
- 前橋市
- 藤岡市
- 渋川市
- 吉岡町
【群馬南地区】
- 高崎市(一部区域)
- 藤岡市(一部区域)
という形で分類されています。
群馬県の都市ガスは仕入れが特殊
なぜ群馬県だけが他の都県とは異なる仕組みであるのかというと、仕入れの過程で違いがあります。
基本的に東京ガスは、都市ガスの主な原料となるLNGを海外から輸入しています。
しかし、群馬地区と群馬南地区においては、新潟県産の国産ガスを原料としているため、「仕入れ価格が安い」という特徴があるのです。
一方で群馬県南部の邑楽郡の各町に関しては、供給方法の違いから東京地区等に分類されています。
※新潟県では、「ガス田」があり、天然ガスが採掘されています。日本国内では、新潟県のほか、千葉県でも大規模なガス田があります。
値上げする金額
今回の料金改定では、群馬地区(顧客数約7万4100件)と群馬南地区(顧客数約9600件)に分けられていた区域を統合し、改定後の群馬地区の料金が適用されることになります。
群馬南地区という区分はなくなりますので、高崎市と藤岡市にお住まいの方は、ご注意ください。
群馬地区の基準単位料金は、一律で15.89円引き上げられます。
これに加え、原料費調整制度の適用比率を現状の4割から9割にまで拡大されます。
つまり、元々の基準となる単価が値上げされることに加え、原料価格が上がった際に、「原料費調整額として適用される金額の比率」が上がることになります。
現在の情勢では、原料価格が高騰していますので、実質的に値上がりすると捉えられるのです。
ただし、もしも原料が安くなった場合には、安くなるガス料金も大きくなります。
これらの改定により、標準家庭のガス料金で計算すると、現状の
- 群馬地区:6465円
- 群馬南地区:6280円
から統一されて
- (新)群馬地区:8313円
に上がることになります。
実質的な値上げ率は、群馬地区で29%、群馬南地区で32%となります。これは直近の平均原料価格を適用した場合の試算です。来年の原料価格によっては、金額が変動します。
家庭用については、急激な値上げを避けるため、原料費調整後の単位料金から5月検針分42.75円~9月検針分8.55円が値引きされ、段階的に値上げが実施されるよう配慮されています。
政府は、ガス小売り全面自由化される前の2016年に「卸供給契約でLNG連動の値決め方式を採用している場合は、国産天然ガスにも原料費調整制度の導入を認める」としていました。
東京ガスとしては、これまで消費者への配慮で4割のみを原料費調整制度に適用していましたが、9割に引き上げられることになります。
昨今のエネルギー危機の影響から、原料価格の変動(高騰)幅を自社負担では限界があるので、顧客への転嫁率を上げる形となります。
対象となる消費者には、2023年2月以降にダイレクトメールなどで通知される予定です。
当社では、一部地域で都市ガスから新都市ガス事業者への切り替えを承っています。都市ガスの料金を少しでも安く抑えたいという方は、ぜひご覧ください。