このページでは、都市ガスの保安管理について記載しています。

主に契約するガス会社を一般ガス導管事業者から小売事業者へ切り替えた場合の保安管理について解説しています。

都市ガスの契約変更を検討されている方、すでに新都市ガス事業者へ切り替えた方もご参照ください。

尚、このページで記載している「一般ガス導管事業者」や「導管事業者」とは、東京ガスや大阪ガス、東邦ガス、西部ガスなど、その地域のガス管を敷設した事業者を指します。
つまり切り替える前の大元のガス会社です。一般ガス導管事業者は、地域によって異なりますのでご注意ください。

「小売事業者」や「新都市ガス事業者」というのは、一般ガス導管事業者の供給エリアに参入している企業です。

切り替え後の緊急保安も導管事業者

まず結論から先に記載しますが、一般ガス導管事業者から新都市ガス事業者へ切り替えた後の緊急時の保安責任は、一般ガス導管事業者が引き続き負うことになります。
新都市ガス事業者に切り替えていてもいなくても、緊急保安については一般ガス導管事業者が担うということで変わらないのです。

ガスに関するトラブルが発生した際には、速やかに導管事業者へご連絡ください。もしも人身に関する事故など緊急の場合には、あわせて119番など適切な所に連絡しましょう。

「ガスに関するトラブルが発生したら、今まで通り一般ガス導管事業者へ連絡する」ということでご認識ください。
導管事業者の緊急連絡先を、ガス機器の近くなどに控えておくことをお勧めいたします。

尚、もしも間違って新都市ガス事業者の方へ連絡してしまった場合でも、一般ガス導管事業者と連携してくれます。
緊急時には、両社が協力し合って解決に取り組むことがガス事業法という法律により定められています。
本来であれば導管事業者と小売事業者はライバル関係という位置付けになりますが、「有事の際には協力し合いなさい」と決められているのです。

新都市ガス事業者へ契約を変更したとしても、緊急時の対応が遅くなるということはありませんのでご安心ください。

以下、保安管理について細かい部分を解説しますので、よろしければご覧ください。

保安管理に関する協力
経済産業省HPより

保安責任の分岐

保安責任について
経済産業省HPより

一般ガス導管事業者からガス小売事業者へ切り替えたお宅の保安責任については、図の通りとなっています。

上述した通り、「緊急保安」に関しては、すべて導管事業者が責任を負うことになっています。
定期点検に関してもほぼ同様なのですが、「ガス栓から先の消費機器」に関しては、小売り事業者が担うこととされています。
ガス栓の先の消費機器というのは、コンロや給湯器、ストーブなどガスを使用している機器を指します。

宅内のガス機器に関しては、4年に一度は点検を行わなければならないことがガス事業法によって定められています。
この設備点検に関しては、新都市ガス事業者の方が担当することになります。

例えば、「コンロや給湯器の調子が悪い」など、緊急ではない場合の機器に関する相談に関しては、小売り事業者の方へ連絡するのが正解です。
いずれにしましても、導管事業者と小売事業者双方が協力し合うことが求められていますので、本来の担当ではない方に連絡してしまったとしても正しい情報を教えてくれます。

このように都市ガスに関しては、設備点検と緊急時保安について明確に区分けされています。
ガス栓より先の消費機器に関しては小売事業者の担当ということは、ガス栓より前に関しては導管事業者が担当するということです。
裏を返すと小売事業者は、ガス栓やメーターの点検をしてはならないということで、触れることができないのです。

このような取り決めがあるため、開栓作業に関しては導管事業者でなければ行うことができないなど、二重の手間が発生することになってしまいます。
責任の所在が明確なのはとても良いことなのですが、一方で新都市ガスでの開栓の手間を複雑にしてしまっているなどデメリットもあるのです。

責任が分かれている理由

保安管理に関して
経済産業省HPより

このように緊急保安と定期点検で責任の所在が分けられていることには、明確な理由があります。
ガス事業法では、「ガス導管事業者は、ネットワークを維持する保守管理の要。この分野は自由化せず~」と定められています。

ガスというサービスの性質上、人命に関わる重大事故が起こる可能性を秘めています。
そのため、事故などの緊急時には、即座に対応できることが保安責任を負う事業者に求められるのです。

導管事業者については、元々保安管理を行うことがわかっていて事業を営んでいますので、緊急時に対応できる仕組みが整えられている状態です。

一方で新都市ガス事業者は、そうではありません。
緊急時の対応を行うということは、供給先のある程度近くに営業所を構える必要がありますし、24時間対応できるように人員を割かなければなりません。
新都市ガス事業者は、大企業ばかりではありませんし、元々ガス以外のサービスを主力としている会社も多くあります。新都市ガス事業者が緊急時の保安責任を負わなければならないというのは、ハードルが高過ぎるといえるでしょう。
小売事業者に緊急時の保安責任を義務付けるというのは、実質的に不可能なのです。

もしも小売事業者に緊急時の対応を義務付けた場合、参入できるのは電力やプロパンガスの会社など、元々近隣で事業を営んでおりすでに事業所を構えている企業に限られてしまうでしょう。
そうなると自由化された意味というのは、ほとんどなくなってしまうのです。

そのため、緊急保安については自由化を行わず、従来通り導管事業者が担うとされています。

都市ガスの安全性

ガス事故総件数
総務省 消防白書より

電気と比べるとガスは危険という印象を持っている方がいるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。

総務省が公表しているガス全体に関する事故件数は、平成30年のデータで862件となっています。
その内、都市ガスによるものが408件です。

都市ガスに限定すると、85%が漏えい事故、残りの15%が爆発・火災事故という内訳。
また事故による死者数は1人、負傷者数は29人となっています。
年間でこの数字ですので、都市ガスが危ないということはないといえるでしょう。

これは以前と比べて、技術が進歩したことによります。ガス機器が主要因による事故がほとんどなくなったことで、ガスによる事故件数は劇的に減少することになったのです。

ガス事故による死傷者数
総務省 消防白書より

とはいえ、事故件数が0になっている訳ではありません。
ガスによる事故の多くは、消費者宅で発生しています。
要因としては、元栓の誤操作、火の立ち消え等が多いようです。元栓とコンロなどの機器にホースがしっかりと接続されているかどうか、不完全燃焼はないかどうかなど、ガスを使用される際には十分にご注意の上でご利用ください。

ガス事故の発生場所別件数
総務省 消防白書より