都市ガスの開栓作業

このページでは、都市ガスの開栓予約について解説しています。

これから都市ガス対応物件に引越しする方はご参照ください。

2017年に都市ガスの小売事業が全面自由化され、消費者はガス会社を選ぶことができるようになりました。ただ引越しによる開栓予約は、各社によって対応が分かれています。

開栓予約を受け付けていない都市ガス会社がある

自由化されて以降、都市ガス小売事業に参入した「新都市ガス会社」の中には、開栓予約を受け付けていない企業も多くあります。

つまり引越し先の開始予約ではなく、開栓した後の切り替えのみを受け付けているのです。

このウェブサイトで紹介している小売事業者の中でも、引越し予約が可能な会社と不可能な会社があります。

開栓予約を受け付けていない会社との契約を希望される方は、導管事業者で開栓をした後に切り替えることになります。

小売事業者とは
正確には「登録ガス小売事業者」。実際に消費者と供給契約を結ぶのが小売事業者です。
都市ガス小売事業が全面自由化した後に新たに参入した小売事業者を新都市ガス会社とも呼びます。小売り事業者が参入しているかどうかは、各導管エリアによって分かれます。
開栓予約ができるかどうかは、各社によって対応が分かれます。

急ぎの方は導管事業者で開栓

開栓を受け付けている新都市ガス会社でも、日にちが空いていなければ手続きが間に合いません。

詳しくは次項に記載しますが、新都市ガス会社で開栓するには、諸々の理由から準備する日数が必要なのです。

明日・明後日など急ぎでガスを使い始めたい方は、お住まいの地域の導管事業者に開栓の依頼をしましょう。

例えば東京ガスネットワーク管内の物件であれば、東京ガスへ連絡すれば急ぎでも受け付けてくれます。

導管事業者とは
正確には「一般ガス導管事業者」。各地域の導管(地下などを通るガス管)の所有者で、東京ガスネットワーク、大阪ガスネットワーク、東邦ガスネットワークなど日本全国で200社強あります。
導管事業者は、お住まいの地域で決まっているので消費者が選ぶことはできません。
都市ガス大手3者は、導管事業と小売事業を分社しています。
  • 「導管事業者:東京ガスネットワーク」「小売事業者:東京ガス」
  • 「導管事業者:大阪ガスネットワーク」「小売事業者:大阪ガス」
  • 「導管事業者:東邦ガスネットワーク」「小売事業者:東邦ガス」

開栓作業は二段階

なぜ開栓予約ができないのか、各社によってそれぞれ理由があるのですが、主に以下のような事情があります。

都市ガスの開栓では、大きく分けて二つの作業が行われます。

開栓作業は導管事業者が行う

一つめは、屋外にあるガス栓を開ける作業。

大元のガス栓を開けることによって、宅内の機器までガスが届くようになります。文字通り開栓するということです。

開栓作業は導管事業者でなければできない
開栓作業は、東京ガスネットワークなど、その地域の導管事業者でなければ行ってはいけないと決められています。参入している小売事業者(新都市ガス会社)は、この作業をしてはならないのです。

ガスは開栓時に点検を行う

二つめは、宅内のガス機器を点検・確認する作業。

開栓後の安全点検
ガス漏れや機器の間違いなどがなく正常に使用できるかをチェックするのです。特にガスサービスは、大きな事故に直結する危険性があるので、開栓と同時に点検をすることが法令で義務付けられています。

都市ガスの場合、このような設備点検は「4年に1度行わなければならない」とガス事業法によって定められています。

従って法的には、必ずしも開栓と同時に行わなければならないとは限らないのですが、使用者の安全を確保するという観点で入居時に行われることが通例です。

点検は供給する事業者が行う
設備点検は、導管事業者でなくても行うことができます。導管事業者・小売事業者どちらが行っても構わないのです。
設備点検は、使用場所にガス供給を行う事業者が行うことになっています。つまり新都市ガス会社と契約したお宅では、この作業は導管事業者ではなく新都市ガス会社が行うことになるのです。

新都市ガス会社で開栓する場合

新都市ガス会社で開栓予約をした場合、「導管事業者が開栓」した後に「小売事業者が設備点検」を行う必要があります。

例えば東京ガスネットワークのスタッフが開栓をした後に、小売事業者のスタッフが来てガス機器の点検をするという流れになるのです。

このようにガスの使用開始は通常、導管事業者が開栓した後に、消費者と供給契約を結ぶ事業者が設備点検を行うという流れで進められます。

開栓作業が二段階になる
安全を確保する絶対条件があるほか、宅外のメーターなど「供給設備は導管事業者の所有物であり、小売事業者は触ることができない」という制限があるため、このような二段階の仕組みにならざるを得ないのです。

設備点検を委託している新都市ガス事業者も

小売事業者によっては、設備点検の作業を導管事業者に委託しているケースがあります。その場合には、導管事業者のスタッフが開栓と点検を同じ流れで行うことができます。

委託費用がかかる
点検を委託している小売事業者であればスタッフを現地に派遣しなくても良いのですが、費用がかかってしまいます。費用の関係で委託をしていない小売事業者は多くあります。

都市ガスの開栓作業には立ち合いが必要

都市ガスの開栓作業には、原則として使用者が立ち合わなければなりません。

これは上述の通り、給湯器やコンロなどが安全に使用できることをチェックをするため、室内に立ち入る必要があるからです。

不在などの再訪問
ガス会社としては、開栓・点検作業のために人員を割かなければいけないのです。
点検がスムーズに終われば良いですが、トラブルが発生する可能性もあります。また訪問した際、もしも不在であったなら再度訪問しなければなりません。

小売事業者が点検する場合、供給場所に時間を合わせて訪問して「導管事業者が開栓をした後」に「自社で設備点検を行う」という流れになるうえ、不在等のリスクも想定に入れなければなりません。

新都市ガス会社にとって人的負担が大きいと言わざるを得ないのです。

人員が限られている

都市ガスの小売事業者として登録している企業は、ガスを専門としている企業ばかりではありません。

電力などを主力事業としている企業も多く、ガスの専任スタッフが充分にいるとは限らないのです。

点検の作業員
またガスの開栓並びに設備点検作業は、一般的には資格を持った作業員が行っています。
資格の規定については各社によって様々ですが、社内研修を受講すること又は一般財団法人日本ガス機器検査協会の「消費機器調査員」など、外部団体の認定資格を基準としている企業もあります。

誰でも良いのではなく、一定の基準を満たしたスタッフが開栓・点検作業を行っているのです。

人員を割くことが難しいという理由で、開栓予約を受けていない事業者は多いと推測されます。

新電力と新都市ガスの予約日数
比較の対象となる新電力での使用開始(再点予約)は、中2~4日ほど空いていれば予約が可能です。
一方で新都市ガスの場合、開栓予約を受け付けている小売事業者でも7~14日ほど前に予約しなければ間に合いません。必要日数にも作業員確保の問題が大きく影響していると考えられます。

都市ガス事業は参入への壁が高い

ガス開栓には、小売事業者にとって負担になる要素が様々あることがおわかりいただけたでしょうか。

スイッチングは作業が不要
一方で開栓した後のスイッチング(切り替え)であれば、作業員が現地に行く必要はなく、導管事業者とデータのやり取りのみで行うことができます。
開栓は受け付けておらず、切り替えのみ申し込み可能という会社があるのはこのためなのです。

比較の対象として、電気や水道など他の公共サービスの場合、通常は消費者の立ち合いは必要なく使用開始の手続きができます。

これは安全面において、電力や水道は事故が発生する確率が低いことが理由です。

上述のような理由が一因で新電力への参入事業者は多く、新都市ガスへの参入事業者は少ないという現状になっています。

新電力事業者数の方が圧倒的に多い
新電力は700社以上あるのに対し、新都市ガスは80社程度に留まっています。

新都市ガス事業は薄利?

また新都市ガス事業は、薄利だと言われています。

元々新電力にしても新都市ガスにしても、公共エネルギーに付随するサービスですので、顧客一件に対して大きな利益を得られる事業ではありません。

その中でも新都市ガス事業は、参入事業者にとっての負担が大きい上に薄利であると言われています。

電気と都市ガスの違い
そもそも電気は生活する上で絶対に必要であるのに対し、都市ガスは他のエネルギーで代用ができます。電力と都市ガスの市場規模を比べると、電力の方が圧倒的に大きくなっています。

また都市ガスは、安全を確保するという点で大きな注意を払わなければならず、従事する人員の負担が増し、作業工程も複雑化しています。

同じ公共サービスではあるのですが、「ガスと電気」で商品が異なるためにこのような違いが生まれ、結果的に新規事業者の参入が難しくなっていると考えられます。