都市ガス料金の仕組み

このページでは、都市ガスの料金体系について、基本的な仕組みなどを解説しています。

都市ガスは、公共サービスであるため元々許認可制の料金体系でした。現在では、小売事業自由化に伴い多くが自由料金制へと移行しています。

新都市ガス事業者も含め、各社様々な料金プランを展開しています。ここでは基本的な料金構成や代表的なプランを紹介しています。

都市ガスの料金構成

都市ガス料金


都市ガスの料金は、基本料金と従量(じゅうりょう)料金によって構成されています。

  • 基本料金は、契約している限り、ガスを使用してもしなくても必ず支払わなければならない料金です。保安管理をはじめとして検針作業、電話応対、アプリの運営など、ガスを使用しなくても契約しているだけで利用できる顧客サービスを運営するために支払う費用と捉えられます。
  • 従量料金は、ガスを使用した分に対する料金です。前回の検針から今回までの使用分に応じて課される金額です。従量料金は、「ガス使用量×1立方メートルあたりの単位料金」で構成されています。

多くのガス会社では、基本料金と単位料金を一つの金額に統一ではなく、ガスの使用量に応じて複数の段階性としています。

大手都市ガス会社の料金は段階性
各都市ガス小売大手の一般料金は、東京ガスが6段階、大阪ガスが8段階、東邦ガスが6段階、西部ガスが4段階に分けられています。
参照:東京ガス料金表

各社共通して、ガスの使用量が増えると基本料金が上がるのですが、その代わりに単位料金が下がるように設定されています。

つまりガスをたくさん使うほど、1立方メートルあたりの単価が安く、お得になっているのです。

使用量が多いほどお得感が増す
これは家族世帯など使用量が多いお宅の負担を軽減するためのもので、公共サービスとしては当然の配慮といえるでしょう。同時にガスの利用を促進する、ガスをたくさん使って欲しいという意図も含んでいます。

「単位料金」に関して、多くの企業では「原料費調整制度」を採用しています。原料調整制度に関しては、別のページで解説しています。⇒原料費調整制度について

料金プラン

多くの事業者では、都市ガスの料金プランは一つではなく複数から選ぶことができるようになっています。

複数の料金プランを展開
例えば東京ガスの料金プランは、5つのプランが用意されています。(一般家庭向けの場合)
  • 一般料金
  • ずっともガス(ポイントが貯まる)
  • 暖らんぷらん(ガス温水床暖房を使用しているお宅向け)
  • エコウィルで発電エコぷらん(ガスエンジン式コージェネレーションシステム(エコウィル)を使用しているお宅向け)
  • エネファームで発電エコぷらん(燃料電池(エネファーム)を使用しているお宅向け)

一般的には、特定のガス機器を使用しているお宅に対して料金を優遇するようなプラン設定になっています。

その他、東京ガスでは展開していないプランとしては、エコジョーズやガスストーブ、空調(ガスヒートポンプ)を使用しているお宅向けの割引を用意している企業が多くあります。

料金プランは、各社によって種類が異なりますので、契約中のガス会社のホームページ等をご確認ください。

料金プランが複数ある理由

料金プランを使い分ける理由としては、ガス機器を使用しているお宅を優遇することにより、ガスの利用を促進することが第一に挙げられます。

お得なプラン設定をして顧客を増やしたい
ガスをたくさん使って欲しいのはもちろん、そもそも「ガスを使用するという選択をして欲しい」意図があるのです。

都市ガスの競合エネルギーとしては、LPガスや電気、灯油などがあります。給湯はもちろん、コンロや暖房など、都市ガスを使用する選択もありますが、他のエネルギーを選ぶこともできるのです。

特に一戸建ての場合には、消費者が使用するエネルギーを選ぶことができますので、「ガスを選んで欲しい」という希望があるのです。

小売事業が自由化されたことも影響

その他、都市ガスの小売事業が自由化されたことも料金プランに影響しています。

かつて都市ガス小売事業は、独占が認められていました。消費者は、地域の導管事業者と契約するしか選択肢がありませんでした。

それが2017年に全面自由化され、他社への切り替えができるようになったのです。

多彩なプラン展開が求められている
これまでは独占状態なので「他社に切り替えられるリスク」がありませんでした。いわば安泰であったのですが、自由化により他社に変更されてしまう可能性がでてきたのです。
ポイント制の導入や電気セットなどのプランは、自由化されたことが大きく影響しています。

もちろん他社に切り替えられたとしても、導管事業者の収入がゼロになる訳ではありませんが、自社供給よりも利益額は減ってしまいます。

新都市ガスの事業者に切り替えられてしまわないように、色々なプランを始めてお得感を生み出しているのです。

ガスと電気セットがもっとも一般的
電気とのセットプランを打ち出しているガス会社が多くありますが、これは新電力事業者として電気の契約も獲得して、顧客を囲い込みたいという意図があります。
このように様々なプラン展開がされるようになったのは、自由化による良い影響といえるでしょう。

新都市ガス事業者の料金プラン

都市ガスの小売事業は、2017年に全面自由化されて他社への切り替えが解禁されました。都市ガスを使用するためにどの会社と契約を結ぶのか、消費者が選べるようになったのです。

「新都市ガスの事業者がどのような料金プランを展開しているのか」については、各社によって設定が全く異なります。

「一般料金」を対象としたプランが多い
多くの新都市ガス事業者では、各導管事業者の「一般料金」に対応したプランを展開しています。
「一般料金で契約中の方であれば安くなりますよ」というプランです。(東京ガスの「ずっともガス」など一般料金と同額のプランも含みます。)

変更しても安くならない可能性もある

中には、各社の割引プランに対応している事業者もあります。現状ですでに割引プランが適用されているお宅でも、新都市ガスに変更することで更に安くできるかもしれません。

料金プランは各社様々
また新都市ガス事業者の場合、一般的にはガス料金のうち「単位料金」の部分を一定の割合で割り引いていることが多いかと思います。
ただ事業者によっては、ガス料金の割引は無く(導管事業者と同額)、ポイントの付与や、電気とセットにすることによる定額割引などによってお得感を打ち出しているサービスもあります。

事業者によっては、新都市ガスへ切り替えたとしてもガス料金が安くならない可能性もあります。

逆に高くなる可能性も
さらに事業者によっては、一定量以上のガスを使用しているお宅をターゲットにしているプランもあります。
例えば、ガスの使用量が10立方メートルを超えた場合には割引されるような料金プランで、逆に10立方メートル以下だと割高になってしまう可能性があります。

新都市ガス会社は良いお客様を顧客にしたい

基本的な考え方として、事業者としては「ガスをたくさん使って欲しい」という意図があります。使用量が多い方が利益率が上がる訳ですし、「ガスをたくさん使う方に、当社の顧客になって欲しい」と考えることは当然でしょう。

またエネルギーサービスは、料金未収の問題が付きまとうため、不安定な単身世帯よりも安定している家族世帯の顧客が欲しいという事情も背景にあります。

払込票での料金支払い(コンビニ払い)を受け付けていない事業者がほとんどであるのも、未収の問題が絡んでいます。

新電力も同様ですが、新都市ガスも料金設定が各社によって様々ですので、お申し込みされる際には十分にご確認の上でお手続きください。

新都市ガス会社に変更する
このウェブサイトからは、いくつかの新都市ガス事業者へお申し込みができるようになっています。いずれも皆様にとってお得になるようなサービスを記載しています。
都市ガス切り替え対応エリア

規制料金と自由料金

都市ガス規制料金が残るエリア
資源エネルギー庁HPより

2022年の時点で、都市ガスは行政によって規制料金と自由料金の2種類に区分されています。

  • 規制料金とは、「行政によって料金体系を規制(管理)された料金」を指します。
  • 対照的に自由料金は「行政によって規制されていない料金」です。

これは「一般ガス導管事業者ごと」に取り決めされています。

元々都市ガス料金は許認可制だった

元々都市ガスは、すべて規制料金でした。

行政のチェックが入っていた
都市ガス料金は、行政によって「料金設定が妥当であるか」「消費者にとって不利益になるような契約内容になっていないか」などを事前にチェックされていました。
新しい料金プランを作る際や既存プランの変更を行う際にも、その都度届け出をして経済産業省の認可を得なければならなかったのです。

これは都市ガスが公共サービスの位置付けであるからです。

消費者に不利益な料金にならないように
電力と同じく公共サービスである都市ガスは、すべての消費者にとって公平且つ安心して利用できることが求められていました。
基本料金や単価を行政が監視することにより、事業者によるぼったくりのような料金設定ができない仕組みになっていたのです。

小売事業自由化により自由料金制へ移行

規制料金であったものが、2017年に自由化されて以降、段階的に自由料金へと移行しています。

自由化により競争が始まった地域に関しては、「料金を規制する必要がない」と判断され、規制が撤廃され自由料金へと切り替えられていきました。

「監視する必要がない」と判断された地域
事業者同士の競争が行われている地域では、ガス会社が独自でお得なプランを打ち出さなければなりません。そうでなければ、他社に顧客を一方的に奪われてしまいます。
「消費者にとってお得でない料金プランは、競争原理により自然に淘汰されていくでしょう」という考え方です。

逆に「まだ十分な競争が行われていない」と判断された地域に関しては、未だ規制料金が撤廃されずに残っています。

規制料金が撤廃されていない導管エリア
2022年の時点では、東邦ガス、日本ガス、熱海ガス、南海ガスの4者のみが未だ規制料金の対象エリアとなっています。

規制料金はなくなる方向

規制料金は撤廃されていく流れとなっています。

そもそも「規制しなければ消費者にとって不利益な料金設定になるかもしれない」という状況は、本来であれば望ましいものではありません。

そのような規制をしなくても、各社が競い合って自然にお得なサービスが生まれていくというのが理想的でしょう。

また料金設定を行う度に行政に届け出をするのは、事業者と行政どちらにとっても効率的であるとはいえません。企業の判断で迅速に対応ができないという点においても、現代の社会環境とマッチしていないと考えられるでしょう。

現在では、都市ガスの料金はほとんどが自由料金制となっており、ガス会社が独自の判断で自由に料金プランを決められるようになっています。