ガステックが日本で開催世界最大の天然ガス業界の商談会である、ガステックが4月4日より幕張メッセで開催されています。
液化された天然ガス(LNG)は、日本国内で都市ガスや火力発電などの原料として、莫大な量を輸入しています。2014年のデータでは、その輸入量は8800万トンに上り、世界のLNG取引の3割を占めています。
近年では、韓国や中国、欧州諸国などもLNG輸入量を増やしていますが、日本では都市ガスの普及エリアの拡大に伴い需要が急増しており、世界一の天然ガス輸入国となっています。
つまり日本は天然ガス業界で世界最大の消費者であり、お得意様でもあります。業界で重要な地位を占める日本ですが、国内でガステックが開催されるのは今回がはじめてとなります。

天然ガスは売り手優位の市場だった

これまでの世界での天然ガスの需要と供給を比較すると、需要量が供給量を上回っている状態でした。
LNGの供給国としては、東南アジアやカタールやイランなど中東アジアの諸国が大きなウェイトを占めていました。これらの国々の多くは国営企業が取引を仕切っており、買い手側である輸入国にとって、長期的な契約を強いられるなど、不利になる条件を課されることが常態化していました。
買い手である日本企業としては、需要家のニーズに柔軟に対応することができず、それがガス代の高騰に繋がっていました。

このように言わば「買い手不利」の状況にあったLNG業界ですが、近年では事情が大きく変化してきています。

シェールガス輸入の開始

数年前に大きなニュースになったシェールガスですが、今年から本格的に開始されました。
そもそもシェールガスとは、地層の「シェール層」から採取される天然ガスのことであり、広義としては同じ天然ガスという認識になります。
このシェールガスは非常に低い生産コストであることが特徴で、主にアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国々から供給されることが予想されています。

シェールガスの輸入開始は、天然ガスの最大消費国である日本にとって、非常に大きな出来事になります。

需要と供給の構図が逆転した

シェールガスの台頭により、これまで需要が供給を上回っていた状況から、逆に供給が需要を上回ることになりました。
上述した不平等とも言える供給国からの条件が、緩和される方向に動いています。

今まで天然ガスの産出国としては注目されていなかった、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国が、シェールガス産出国として輸出量が大幅に増えると考えられています。
これまでは東南、中東アジアからの輸入が中心だった図式が、ちょうど変化していく時期にあると言うことができます。

このような情勢の変化により、買い手側、顧客である日本は、どこから買うのかを選ぶことができるようになっています。つまり売り手優位だった市場から、立場が逆転したと考えることもできるでしょう。
今回ガステックが日本で初開催されているのも、そのようなことが影響しています。

ガス代が安くなる!?

上述したような世界情勢の変化は、日本のガス消費者のみなさんにとっても大きな影響があります。
アメリカで起こったシェールガス革命から、日を追うごとに施設が整備され、掘削コストが削減されている状態です。安価で供給されるシェールガスは世界のエネルギー業界に革命を起こすことになり、日本の企業も安い価格で輸入することができるようになります。
日本の消費者にどこまで還元されるのかは未だ不透明ですが、少なからず恩恵があると考えられています。

また、これまでの供給元であるアジア諸国では、国営企業が輸出を取り仕切っているのに対し、北米、豪州の諸国では民間企業がシェールガスを採取し、輸出しています。
民間企業が取り仕切ることは重要なことであり、市場の変化や顧客のニーズに対して、柔軟に対応することが考えられます。
日本の企業としては輸入をしやすい環境となりますので、エンドユーザーである顧客への対応も今までとは違ったものになるでしょう。

4月から開始された都市ガス自由化にも影響

国内では4月1日から都市ガスの自由化が解禁されており、ちょうど同じ時期にガステックの商談会が開催されることになりました。
国内で競争が開始されたこの時期に国際会議が開始されることは、大きな意義があります。自由化されたことは顧客を増やすチャンスであると同時に、顧客を奪われるピンチと見ることもできます。
自由化されてから数日しか経過していない状況では、各社今後の国内での需要が不透明であると言えます。想定していたよりも需要が少なくなってしまった、又はその逆など、各社様々な状況になる可能性があります。
そのような状況に合わせて、柔軟に輸入量を調整できること、供給過多になってしまった時に、国外の企業と連携できることなど、様々な事態を想定することを考えると、今回のガステックでの動向が注目されます。