電力自由化2016年4月に電力の小売りが自由化され1年が経過しました。日本全国で契約を切り替えた件数は343万件という結果になりました。
この件数は全契約数の5.4%にあたりますが、この数字が多いのか少ないのか、判断はそれぞれかもしれませんが、おおむね「まずまずの進捗」という評価のようです。

電力の自由化により390社が参入していますが、現状では大幅に料金が安くなるようなプランを打ち出すことが難しいため、各社は自社の商品とセット販売することにより、他社との差別化を図っています。

東京ガスが顧客を獲得

新電力に切り替えた地域別の件数は、関東地方が181万件、関西地方の72万件にのぼり、関東、関西のみで全国の70%を占める結果となっています。
既に自社サービスで関東地方に顧客を持つ企業が、堅調に新電力の顧客を増やしています。その中でも、東京都内を地盤にする東京ガスが70万件と、契約数を大幅に伸ばしています。既に都市ガス事業で1,100万件の顧客を持っているため、最も有利な立場であることを活かした形となりました。電力の料金が安くなる上に、顧客との信頼関係を既に築いているということで、この優位性を活かし100万件以上の顧客獲得を目指しています。

都市ガス自由化で競争激化

2017年4月に都市ガスが自由化されたことにより、今度は東京ガスが、東京電力をはじめとした他社から顧客を狙われる立場となりました。東京ガスとしては今後、新規顧客を獲得すると同時に、既存顧客の囲い込みを進めることが急務となります。

このような電力会社とガス会社の競争が全国で展開されることになりますので、顧客としてはよりお得なサービスが提供されることが期待されます。
全国的には5.4%の切り替え率となりましたが、今後認知度の拡大と、更なるサービスの充実が進められることにより、電力と共にガス業界も切り替え率が増加し、活性化されると見込まれています。

都市ガス事業は電力よりも参入しづらい

電力と都市ガスは同じライフラインのサービスですが、企業が競争に参入するにあたり、大きな違いが2点あります。
・都市ガス調達が難しい
都市ガスは卸売市場の整備が進んでいないことから、ガスを調達することが難しいという難点があります。物理的にLNGを調達する場合、導管を整備するか、タンカーで運搬するかどちらかを行う必要がありますが、どちらにしても大きな費用がかかりますので、収益を見込むことができる事業なのかどうか、様子見状態の企業も多いようです。

・保安管理の義務
ガスが漏れた時など、なにか顧客宅でトラブルがあった場合の管理が、小売り業者の義務とされています。ガスの事故自体は極めて稀ですが、万が一の時に対応しなければならないというのは当然の措置です。つまりガス関連でトラブルがあった時に、新規参入した企業が駆け付けなければなりません。
この制約があるため、企業としては無暗やたらに契約を取れれば良いということではなく、契約を獲得した後に管理するための施設をあらかじめ準備しなければなりません。

このような事情から、現状では電力自由化時と比べ、都市ガス事業への参入業者は少なくなることが見込まれています。
今後参入する企業はある程度増えてくることが予想されますが、どこまで活性化するのか、電力と比べどのような結果になるのかに注目が集まります。