愛知県名古屋市内に本社を構え、都市ガス事業を展開している東邦ガスと、同じく名古屋市を拠点とし、電力事業を展開する中部電力が業務提携を行うことが発表されました。
両社は「ガス」と「電力」というライフラインのサービスを扱う大手企業であり、これまでは表立った接点というものはありませんでした。
しかし、2017年4月より都市ガスの自由化が解禁となり、天然ガスの輸入基地などの大規模な施設を持たない企業でも、ガスの小売りを行うことが可能となりました。
このことに起因して両社が提携することになりましたが、ではなぜ異なるサービスを手掛ける両社が、都市ガス自由化により提携することになったのでしょう。
電力会社が都市ガス事業に参入
自由化を受けて、今回の中部電力も含め、東京電力など各地域の電力会社が都市ガス事業に参入することを表明しています。
電力会社としては、地盤としている地域で既に顧客を抱えている状態であり、参入は必然のものと言うことができます。既に電気の供給をしている顧客に都市ガスもセットで販売するという図式が成り立ちますので、顧客を取り込むのに最も有利なのは電力会社だという見方もあります。
ガスと電気とのセット割引きや、ポイント制の導入、支払いの簡素化など顧客にとってもメリットがありますし、既に電気で契約している会社ということで安心感もあると考えられます。
電力会社だけでなく、都市ガスやプロパンガスの大手企業なども参入を表明していますので、今後各社のサービス内容などの動向に注目が集まります。
顧客の保安管理は小売り業者が行う
自由化されたことにより、東邦ガスと中部電力は小売りの部分では競合することになります。中部電力としては、東邦ガスの都市ガスユーザーに、自社への乗り換えを勧める立場になります。ライバルであるはずの両社が提携した理由は、顧客のガス機器管理に理由があります。
今回の自由化では、コンロや給湯器、ストーブなどのガス機器の保安責任は小売りを行う企業が担うことになっています。
例えば東邦ガスから中部電力に都市ガスを変更した場合、ガス漏れなどのトラブルがあった時の対応は、中部電力が担うことになります。本来は電力会社であるため、ガスの保安体制は整っていませんし、0から管理体制を構築していくということは、費用などの面で現実的ではありません。
そのため、実績豊富で既に管理体制を持っている東邦ガスに保安部分は委託するということになります。
このような管理体制の形が構築されるのは自然なことであり、恐らく他地域でも同じような図式になると考えられますが、顧客としてはややわかり辛い側面があるかもしれません。
簡単に言うと、「都市ガスを乗り換えたとしても、保守管理は今までと同じ」ということになります。
従って各社のプランを見比べて、メリットがあるようであれば、安心して乗り換えることが可能な状況にはなっています。