シンガポールのマーライオン液化天然ガス(LNG)の取引基地として、シンガポールが拠点となる動きが広がっています。日本の三菱商事などの商社、各国の企業が拠点を増設しています。
本来シンガポールは国土的には小国で、天然ガスが産出されている訳でもないのですが、海運の要衝地として注目が集まっています。
現在日本国内で利用されている都市ガスの多くは、中東アジア諸国から輸入しています。輸入して国内で消費するだけであれば海外に基地を持つ必要はありませんが、日本企業が基地を建設する理由には以下のようなことが挙げられます。

天然ガス取引契約の多様化

これまでのLNG市場では需要過多の状態にあり、売り手側が有利な立場が続いていました。日本企業など買い手側としては、長期契約を強いられるなど、比較的不利と言える状況だったのですが、シェールガスの台頭により近年では情勢が変化しつつあります。
シェールガスの生産増加により、供給量が需要量を上回る状態となり、輸出国は輸入国に対し、態度を軟化せざるを得なくなっています。
供給量の増加だけでなく、シェールガスは従来の天然ガスよりも安価で生産可能なため、シェールガスの生産国である、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが、天然ガスの輸出シェアを急激に伸ばしています。
また、従来の天然ガスはアジアの国営企業が取り仕切っているのに対し、シェールガスの輸出は民間企業が行っているため、買い手に対し柔軟な契約を示す傾向にあります。

このような事情から、今まで天然ガス輸出の主役であった中東アジア諸国も、輸入国に対し態度を軟化させています。
契約形態が多様化し、単純に「買うか買わないか」だけではなく、複雑化してきていることから、供給国と需要国を結ぶ拠点として、シンガポールに注目が集まっています。

アジア諸国への都市ガスサービス開拓

今までアジア圏内での天然ガス消費国としては、日本のみが突出していました。
それが近年では中国や韓国の輸入量が増加しており、アジアでのマーケットが急激に拡大しています。
このような流れから、天然ガス(日本で言う都市ガス)サービスが普及していない、アジア諸国への開拓の動きが進んでいます。今後、日本・中国・韓国だけではなく、他の国々で天然ガスの需要が増加することが見込まれています。
シンガポールはそのための拠点として絶好の位置にあり、アジア諸国へのインフラ開拓の拠点として、日本企業も注目しています。