資源エネルギー庁は、電力・ガスの業界を超えたLNG(液化天然ガス)融通の枠組みとして「地域連携スキーム」と「全国連携スキーム」を創設します。

全国連携スキームでは、エネ庁が各社の調達や在庫状況を把握し、融通余力がある事業者を仲介します。

10月17日に開催した「電力・ガス基本政策小委員会」に方向性を示して了承されました。

これはロシア・ウクライナ問題に端を発したもので、サハリン2の供給途絶などの有事に備えLNGの供給対策に万全を期したもの。

一方の地域連携スキームは、LNGの共同基地を有する事業者同士や、基地間の距離が近い、導管でガスを融通できるなどの条件にあった電力・ガス事業者を中心に「LNG安定供給協議会(仮称)」を地域ごとに立ち上げます。

LNG途絶などが生じた場合、まずは地域内で円滑に融通できるよう事業者間で連絡・協力体制を構築します。
全国連携スキームは、地域連携スキームで対応できない、より深刻な問題が生じた際の対応を想定しています。

具体的には、エネ庁によるモニタリングで全国的なLNG不足が確認され、電力やガスの需給ひっ迫が予見される場合や、紛争・事故などで大規模かつ多数の事業者に影響が及ぶLNG途絶が発生した場合を想定しています。

このような事態が生じた場合、事業者からエネ庁にLNG融通を要請することができるようになっています。

仲介を受けた融通余力のある事業者は、相対交渉に基づき、可能な場合はLNG融通を実施します。融通に関する価格等は、事業者間の協議で決定するため、融通することは強制ではありません。

冒頭で記した通りこの連携は、ガス業界だけではなく、電力事業者も枠組みに入っています。

一般的には、天然ガスというと都市ガスというイメージをお持ちかもしれません。ただ実際には、東京電力をはじめとした電力会社も、都市ガス事業者と同じように天然ガスを取り扱っているのです。
ガス業界が取り扱っているのは、日本のLNG取扱量の3割強とされています。

この仕組みは、「非常事態が起きた際には、垣根を越えてみんなで助け合いましょう」というものです。
現時点ですでに日本国内のエネルギー業界は、未曾有の緊急事態となっており、エネルギー価格は軒並み高騰を続けています。

ロシア・ウクライナ問題の終結が見えず、原料の輸入に関して大きな問題が発生している現状では、このような非常事態が起こらないとは決して言えないのです。