東京ガスは7月21日、原料費調整制度の調整上限額を現行の91,600円から156,200円に変更することを発表しました。(東京地区等)
同じく群馬地区と群馬南地区に関しても、43,760円から74,730円に引き上げます。
この改定は、「一般ガス供給約款および一部の選択約款」とされていますので、家庭用向けと使用量が少ない一部の法人や個人事業主に向けたものとなっています。
改定は9月1日からなので10月検針分のガス料金から適用となります。
ただし、引き上げ額が非常に大きいことから、いきなり全額引き上げではなく、移行措置として2023年2月検針分までに段階的に引き上げることとしています。
東京ガスと契約中の方は、10月以降ガス代が高くなる可能性が高いということでご注意ください。
詳しい金額は、東京ガスのHPに掲載されていますので対象となる方はご確認ください。
東京地区等
群馬地区、群馬南地区
また原料費調整制度について良くご存知でないという方は、こちらのページで基本的な部分を解説していますのでご覧ください。
原料費調整の元となるLNGの輸入価格に関しては、現在10万円を超えています。つまり現状の上限額91600円をすでに超えてしまっている状態。
東京ガス(東京地区等)では、今年7月検針分ではじめて上限を突破しており、さらに上昇を続けている状況です。
ただし、現状では上限が91600円に設定されていますので、上限を突破した分の金額については、東京ガスが負担しています。
今回、上限額が大幅に引き上げされたということは、東京ガスが「自社で負担することは限界がある」と判断したと考えて良いでしょう。
また、現状の原料費高騰は一過性の事象ではなく長引く可能性が高い、今後もすぐに下がることはなく、逆に上がる可能性があると考えての判断です。
7月から9月検針分の上限超過分に関する同社の減益額は、数十億円に上ると見られています。このままの上限設定では、自社の経営を圧迫しかねないとして引き上げの判断に至っています。
上記のページで解説していますが、東京ガスが調整額の上限を設けているのは義務ではなく、同社の自主努力によるものです。東京ガスエリアは、2021年10月に規制料金が撤廃され自由料金へ移行しています。
つまり、本来であれば上限を撤廃しても構わない状況なのですが、今回は引き上げという対応に留めているのです。
東京ガスは、自由料金にも関わらず原料費調整額の上限を設けている数少ない事業者の一つです。現状では、東京ガスと大阪ガスのみが、自由料金であるにも関わらず上限額を設定している状況。
尚、新しい上限額である156200円に関しては、「3月から5月の平均原料価格の1.6倍」の数値です。「直近3ヶ月分の平均原料価格の1.6倍」という計算は、規制料金エリアに対する料金規則です。
東京ガスは、すでに規制料金が撤廃されているので、この計算でなければならないということではありませんが、今回は従来の考え方を踏襲して上限額を決定したという形です。
※東京地区等と比べて群馬地区、群馬南地区の上限額が低いのは、このエリアが国産天然ガスの使用比率が高いため原料費が元々安いからです。