都市ガス切り替え低調に推移2017年4月に都市ガスが自由化され1か月が経過しました。それに伴い経済産業省が切り替え状況を公表しています。
現状で参入企業は12社に留まり、都市ガス事業の難しさを露呈した結果となっています。

切り替えた世帯は0.8% 7割が近畿地方

公開されたデータによると、今までの都市ガスから他社に切り替えた世帯数は19万1923世帯で、全世帯数の0.8%に留まっています。その内13万5651世帯が近畿地方となり、全体の7割を占める結果となりました。関東地方は1万9882世帯となり、東京電力グループが7月に参入を控えていることを鑑みても、非常に低調なスタートになっています。
また、北海道・東北・中国・四国地方では未だ参入している企業が無いため、切り替えは0件となっています。

ガスの調達に難色 電力との差が明確に

2016年4月に自由化されている電力小売りの場合では、開始1か月で参入企業が291社・およそ90万世帯が切り替えています。都市ガスの19万件と比べると、約4.7倍となり両者の差がはっきりとデータで表れています。
同じライフラインのサービスであるにも関わらず、なぜこのような顕著な差がでてしまったのでしょうか。

電力市場では新規に参入する事業者が自由に売り買いすることができる、卸取引所があるため参入することが容易であるのに対し、都市ガス市場ではそのような取引する場が整備されていません。そのため企業が都市ガス事業に新規参入することを考えた時、顧客に供給するガスを調達する方法としては、①自社で原料を輸入しガスを製造する。②大手の企業から卸し売りをしてもらう。この2パターンのどちらかになります。①の方法は輸入基地から建設する必要があり、ほとんどの企業にとっては現実的ではありません。従って②の方法になるのですが、ガスの供給はそれだけではできません。
導管を整備する必要(又は運搬する)・熱量を調整する必要・契約後に保安管理する営業所の設置など、課題が山積みとなります。そのため多くの企業にとっては、壁が厚いことになり新規参入を阻んでしまっている状況です。
大企業でない限り上記の条件を揃えるのは難しく、可能である企業も現時点では様子を見ているという状態でしょう。

実際に都市ガス料金は欧米諸国と比べると、日本の料金は2~3倍ほどとなりかなり割高です。料金を安くする余地があるため自由化されたわけですが、このままでは「自由化とは名ばかり」という状況になりかねません。
このような状況に対して、今後各企業はもちろんですが、国がどのような対策を打ち出していくのかが注目されます。