経済産業省、資源エネルギー庁の電力・ガス基本政策小委員会がガス・電気料金の原料(燃料)費調整制度の見直しを検討しています。
これはロシアによるウクライナ侵攻などの影響により、原料価格が高騰していることが背景にあります。
電力事業に関しては、小売り料金が高騰、さらに新電力事業者の倒産・事業撤退が相次ぐなど大きな打撃を受けている一方、都市ガス事業は現状でそこまで大きな問題が起きているということではありません。
しかし、都市ガス小売全面自由化が実施された2017年度には、およそ「5万円/トン」で推移していたLNG(液化天然ガス)輸入価格は、今年に入り「8万円/トン」を上回る水準にまで上がっている状況。このまま輸入価格の上昇が続いた場合、「基準価格の1.6倍」に設定されている原料費調整制度の上限価格に到達する企業が出てくる可能性があります。
都市ガス大手3社の上限額は、東京ガスが9万1600円、大阪ガスが10万2540円、東邦ガスが13万3360円。このように輸入価格が上限額に到達する可能性が出てきていることから、調整上限の撤廃が望ましいとの考えもありますが、消費者の負担増に直結する問題であることから資源エネルギー庁としては慎重な姿勢です。
そもそも原料費調整制度とは、都市ガス原料費輸入価格の変動を迅速に小売料金に反映させるための制度です。
事業者としては、輸入価格が上昇した際には調整価格が上げられ、下落した場合には調整価格も下げられます。この制度があることにより事業者としては、基本となる料金の変動を頻繁に行う必要が無く、輸入価格の変動に対して柔軟に対応ができるようになっているのです。
日本国内で消費されている天然ガスのほとんどは海外から輸入されており、世界情勢に影響されて輸入価格が大きく揺れ動く可能性があるため、このような制度が設けられています。
もしも原料費調整制度が撤廃されたとしたら、事業者としては急な輸入価格の高騰に備えるため、料金を高めに設定せざるを得なくなるでしょう。消費者保護という観点から原料費調整制度が設けられているのです。
また原料費調整制度の上限価格が撤廃された場合、輸入価格に連動して小売料金が際限なく上昇してしまうことになるため、消費者としては一定のリスクが伴うことになります。
実際に2022年4月に起きた電力の燃料費高騰問題の際には、一部の新電力の燃料単価が東京電力エナジーパートナーの単価の数倍まで上昇してしまったケースもあります。
しかしながら、事業者としては上限価格が設けられていることはリスクであり、経営が大きく圧迫されてしまう可能性を秘めています。
公共サービスである都市ガス・電力がどのように在るべきかというのは、非常に難しい問題です。消費者を保護することはもちろん、事業者を保護する必要もあるほか、自由化されている現在では健全な競争が行われるような仕組みを作る必要があるのです。
世界的なエネルギー危機に面した状況で、資源エネルギー庁がどのような采配を振るうのかが注目されます。