資源エネルギー庁は、7月20日、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会」を開催し、今後の電力とガス小売政策に関する中間取りまとめを行いました。

ガスに関しては、「ガスの小売営業に関する指針」が一部改正され、原料費調整金額に上限があるメニューなど、一般家庭の需要家が料金変動リスクに備えることができる料金メニューの提供を「望ましい行為」に追加される方針が決まりました。

現状では、輸入されているLNGとLPG共に値上がりが続いており、2017年に小売事業が自由化された頃と比べると3倍以上の金額になっている状況。
それに伴い、国内のガス小売価格も上昇傾向にあります。

現在、都市ガスの小売料金は、規制料金と自由料金の2種類に分けられています。
規制料金は原料費調整額の上限が基準値の60%に定められており、これを超えた分に関してはガス会社が負担することになります。
一方で自由料金に関しては、上限の有無に関する規制はないため、事業者の裁量に任されている状態です。

現状で規制料金が残るエリアは、東邦ガス、熱海ガス、日本ガス、南海ガスの4者のみで、その他はすべて自由料金になっています。
また自由料金制の中で自主的に調整額の上限を設けているのは、東京ガスと大阪ガスの2者のみです。

その他の都市ガス会社は、すべて原料費調整額に関して上限を設定していない状況です。
今回の取り決めは、この状況に対して待ったをかけ、上限を設けることを促すものになっています。

原料費調整額の上限がない場合、このまま原料費の高騰が続いた場合、ガス料金も際限なく上がってしまうことになります。
消費者の中には、この状況をリスクに感じる方もいるでしょうということで、上限を設定したプランも用意して、選択できるようにしてはどうかと勧めているのです。

もちろん調整額に上限があれば、消費者としては安心することができるでしょう。
しかし、上限を設定した場合、当然ながら超過した分に関しては事業者が負担しなければなりません。
新規参入している小売事業者は、大手企業ばかりではありませんし、中には広く顧客を募るという形ではなく、特定のニーズを狙った事業者もあります。
このような事業者にとっては、調整額に上限を設けることは実質的に不可能だと考えられるでしょう。

上限を設けることを義務化すれば消費者は安心ですが、逆に参入する事業者がいなくなるまでいかなくても、極端に減ってしまうことが考えられます。
都市ガスの小売事業に参入するのは、リスクが高過ぎると判断されてしまうのです。

これは非常に難しい問題で、都市ガスの小売事業を自由化したこと自体が適切であったのかという疑問も生じかねません。
恐らく、自由化された2017年時点では、現状のような非常事態が発生することを想定していなかったのではないかと推測されます。

また、そもそも消費者が原料費調整制度や調整額の上限などの仕組みについて、しっかりと理解しているのかという問題もあります。
原料費調整制度の基本的な部分については、別ページで解説していますのでよろしければご覧ください。